院長が専門とする
肝胆膵領域の疾患
院長はこれまで消化器の中でも肝臓・胆道・膵臓の病気を専門としてきました。下記のような病気や、肝臓・胆道・膵臓のがんなどについての検査、治療についてもご相談ください。
慢性肝炎
肝炎には急性と慢性があるわけですが、慢性肝炎は急性肝炎の症状(肝臓の炎症性疾患)が6カ月以上経過している状態を言います。原因の多くは肝炎ウイルス(A型、B型、C型、D型、E型)の感染による発症とされ、その6割程度はC型と言われています。なお肝炎ウイルス以外にも、最近は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)や非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)がきっかけとなって慢性肝炎を発症する患者さまも増えてきています。そのほかでは、薬剤、自己免疫、アルコール性肝障害が原因の場合もあります。
主な症状は、全身の倦怠感、食欲がない、疲労感といったものです。そのほか、発熱もありますが微熱程度で、不快感が上腹部でみられるほか、人によっては黄疸がみられることもあります。はっきりと症状が出るわけではないので気づきにくいこともありますが、進行すると肝硬変を発症するようになります。
治療に関してですが、原因となる病気の治療を行っていきます(例えば、B型肝炎やC型肝炎などのウイルス性肝炎の患者さまであれば抗ウイルス薬を、自己免疫性肝炎の患者さまであれば、免疫抑制薬を使用する など)。また薬剤が原因であれば、服用を中止するといったことを行っていきます。
肝硬変
肝硬変は、肝臓がかたくなってしまう病気です。この場合、慢性肝炎(ウイルス性肝炎(C型、B型)やアルコール性肝障害で引き起こされることが多い)をきっかけに肝細胞が線維化し、次第に小さく、そしてかたくなっていきます。また表面はでこぼこした状態で、病状がさらに進行すると肝臓の機能も低下していき、様々な症状が現れるようになります。
よくみられる症状ですが、発症初期は自覚症状が出にくいとされ、病状が進行するようになると、全身の倦怠感や食欲不振がみられ、さらに進んでいくと黄疸(皮膚や白目の部分が黄色くなる)や腹水が溜まって下腹部が膨れる、肝性脳症(体内にアンモニアが蓄積し、意識障害などを引き起こす)を発症するなど、だんだん深刻になっていきます。そのため、早期発見と早期治療が大切になります。
治療に関してですが、一度線維化してしまった肝臓を元通りにすることは現時点ではできません。そのため、これ以上症状を進行させない治療か、症状を和らげる対症療法になります。なお、線維化しても自覚症状がない、あっても食欲不振程度であれば、代償期(代償性肝炎)の状態ですので、慢性肝炎の治療をしていけば進行は抑えられるようになります。一方、肝硬変の症状がみられるなど、進行期にある状態は非代償期(非代償性肝炎)とされ、肝硬変による合併症(腹水、肝性脳症、食道・胃静脈瘤、肝臓がん など)に対する予防や治療が行われます。
脂肪肝
肝臓に脂肪(中性脂肪)が蓄積されている状態で、肝細胞の5%以上に脂肪が溜まっていると脂肪肝と診断されます。なお脂肪肝を発症する原因は2つあります。ひとつは慢性的に飲酒をしていくことが原因のアルコール性脂肪肝で、もうひとつは肥満や生活習慣病(糖尿病、脂質異常症)によって引き起こされる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)です。
なお、どちらの原因による脂肪肝だったとしても、自覚症状がみられにくいと言われています。ただ人によっては、易疲労感、全身の倦怠感、お腹に張りなどの症状がみられることがあります。ただ症状がないからと放置が続けば、慢性肝炎を併発させ、そこから肝硬変や肝臓がんへと進行することもあるので要注意です。ちなみに脂肪肝は、自覚症状がみられなくて気づきにくいとされていますが、定期的な健康診断で、肝機能の数値が上昇している、腹部超音波検査で脂肪肝が発見されたといったことで気づくこともよく見受けられます。
治療についてですが、アルコール性脂肪肝が原因の患者さまについては、原則禁酒になります。またこの場合は、栄養状態が好ましくないことも多いので、バランスの良い食事にも努めていきます。一方、非アルコール性脂肪性肝疾患の患者さまでは、肥満や生活習慣病(糖尿病 など)がきっかけのことが大半なので、適切なエネルギー摂取(カロリー制限)を厳守し、運動療法(息が上がる程度の有酸素運動、例えば1回30分程度のウォーキング など)も日常生活に取り入れるなどして減量し、肝臓に負担がかからないようにしていきます。
胆石症
胆のうの中で発生した結石のことを胆石と言います。胆石とは砂つぶによく似た塊状のもので、胆汁の成分が固まったものです。これが胆のうに留まっている状態を胆石症と言います。
発症の原因は、日頃の食生活によるところが大きいです。具体的には、コレステロールを多く含む食品や高カロリー食の摂取量が増え、その一方で食物繊維を多く含む食品(野菜、海藻 など)の摂取量が減少している。また食事の時間が規則正しくない(朝食を抜く、昼食をとらない、夜遅い食事 など)といったことが続くと胆汁が濃縮して成分が固まるなどして、結晶化(結石)しやすくなると言われています。なお発症しやすいタイプとしては、肥満気味の方、40~50代の方、女性が挙げられます。
主な症状ですが、食後に右の脇腹付近が痛むことがあるほか、嘔吐や吐き気がみられることもあります。また胆石が胆のうの出口付近まで動く、胆管で詰まるなどすると激痛に見舞われるようになります。また自覚症状はないものの、健診などの腹部超音波検査で胆石が見つかったというケースも少なくありません。
なお胆石が見つかったとしても、これといった症状がみられなければ、経過観察となります。治療の対象となるのは、症状のある場合で、この場合は胆石を溶かす薬(胆石溶解薬)を服用する薬物療法(ウルソデオキシコール酸 など)が行われます。また、胆石が大きすぎて薬で溶解するのは難しい、胆石によって胆のう炎や胆管炎が起きているという場合は、胆のうを摘出する手術療法が行われますが、最近は開腹ではなく、腹腔鏡による手術を採用するケースが多いです。
膵炎
膵炎とは、膵臓に炎症が起きている状態で、急性と慢性に分けられます。そもそも膵臓は、消化酵素(膵液)を作り出す器官で、膵液を十二指腸へ送り出しているわけですが、何らかの原因で膵臓そのものが消化(自己消化)されてしまうことで、膵臓が損傷を受けている状態を膵炎と言います。
急性膵炎
急性膵炎は、アルコールの大量摂取によって引き起こされることが多いとされ(アルコール性急性膵炎)、次に胆石が胆管内から移動し、十二指腸乳頭部で(胆石が)詰まることで、胆汁と膵液の流れが滞るなどして、膵臓内で自己消化が進む(胆石性膵炎)といったことが考えられます。前者は男性が、後者は女性の患者さまが多いと言われています。いずれにしても急性膵炎は重症化することが多く、生命に影響することもあるので、早めに治療をすることが重要です。よくみられる症状は、背部痛、みぞおちからへその周囲あたりにかけての激痛(腹部の痛み)、吐き気、食欲不振、発熱といったもので、重症化すると意識障害や呼吸困難、吐血や下血などがみられ、腎臓も障害を受けていると尿量も減少します。このような状態になったら直ちに救急車を呼ぶようにしてください。
急性膵炎と診断されると、まず重症度(軽症、中等症、重症)を判定します。ちなみに軽症であっても1週間程度の入院は必要とされ、絶食と安静に努め、水分と栄養、薬剤(痛みの症状を抑える薬 など)の点滴をしていきます。
慢性膵炎
慢性膵炎は、急性膵炎が長引いている状態ではありません。これは膵臓内で小さな炎症が繰り返され、それによって細胞が線維化し、やがて肝臓全体が硬くなって、機能低下していくという病気(膵液が分泌できなくなる など)になります。なお発症の原因については、アルコールの大量摂取、免疫の過剰反応といったことが挙げられますが、原因が特定できない(特発性慢性膵炎)こともあります。
主な症状としては、腹部上部から背部にかけての痛み(食後や飲酒後が多い)、嘔吐・吐き気、下痢などが慢性的にみられます。また、病状が進行すると膵石、膵管狭窄などの合併症、機能障害として消化吸収障害や糖尿病を発症することもあります。
治療に関してですが、(慢性膵炎)発症の原因がお酒であれば禁酒や禁煙をします。また高脂肪食も控えるようにします。また痛みの症状があれば、鎮痛薬を使用していきます。このような環境を整えたうえで、合併症(膵石、膵管狭窄)のある方や消化吸収障害や糖尿病の患者さまの治療を行っていきます。なお膵石の患者さまでは、衝撃波によって石を粉砕する体外衝撃波結石破砕療法(ESWL)、膵管狭窄の患者さまでは、内視鏡的ステント留置術などが行われます。